【エロゲの表現規制】について卒論を書こうと試みる

※表現規制の是非を論じるものではありません。

「エロゲ表現規制研究」の参考文献 その1 【子どもというレトリック 無垢の誘惑】

こんにちは。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

今回から私の研究に当たって読んだ本を紹介したいと思います。

第一弾はこちら。

「子どもというレトリック 無垢の誘惑」

 

これは私がエロゲを研究すると宣言した際、先生が一番に勧めてくださった本です。

ざっくり言うと、「悪書追放運動」や「有害コミック問題」などを取り巻く言葉たちを通して、「子ども」概念を見つめ直す、みたいな内容です。

「エロゲの表現規制」を社会の中に位置付ける上で、メディアとしての性質がある程度似ていて、かつ大きな議論を巻き起こしたコミック関連の表現規制問題は参考文献として避けて通れないところでありましょう。

 

「有害」とは何か?

この本において序盤の問いであり、私自身興味深く感じたのは上記のような内容でした。「警察白書」など公的な書類にも「青少年に有害〜」と書かれることが当然に思われる中、まさにその点に疑問を持って検討する姿勢が刺激的でした。

議論の絶えないこの問いですが、最終的な答えを出すのは、やはり裁判官のようです。これは最近読んだ本での「ある表現がわいせつか否か」という問いにも同様で、この手の話題において法学が切っても切り離せない分野ではありそうです。

しかし、私の研究においてはその辺りを白黒はっきりさせる必要はない、ということも忘れてはいけません(自戒)。

大切なのは、「『有害』とは何か?」という問いに対してどのような論理で「有害である」あるいは「有害ではない」と判断されたか、ということです。もう少し広く言うと、人がある表現を「有害」か「有害ではないか」を判断するときの論理には、どのようなものがあるか、ということを整理すること社会学的な研究の目標となりますので、「ある判断が正しいか正しくないか」という問いは法学に任せ、ごっちゃにしないようにしましょう(自戒)。

 

悪書追放運動と有害コミック騒動

悪書追放運動とは1950年代に起こった、児童雑誌に掲載されたマンガの内容を批判する運動のことです。

性表現というより、人殺しや暴力などのいわゆる「グロ」表現が問題の中心でした。

この本の特徴でもあると思うのですが、年表を使って運動の経緯がわかりやすく示されています。その結果分かるのは、悪書追放運動は「子ども(青少年)」を保護しようとする民間団体のみによる運動ではなく、出版社や編集者側、さらには漫画家も巻き込んだ議論の場を持ち、収拾が図られたということです。

 

有害コミック運動は比較的新しく、1990年代からになります。

こちらの方が私の関心に近く、性表現規制につながる一件です。この時期には、いわゆる「ロリコン漫画」や「少女漫画の過激な性表現」などの要素が揃っていました。

「このような表現は青少年には見せられない」「不適切である」といった意見に対し、出版社側の対応は表現の自由を守るための自主規制」でした。自主規制をすることなく強気で出版を続けたとして、裁判で「わいせつ物を売っている」と確定してしまえば、その表現は完全に消滅してしまいます。 そして裁判が常に過去の判例を参考にする以上、事実上の禁止状態に陥るのを避けるためには、いわば「バランス取り」のような、表現を守るために規制賛成派も反対派も納得できるような自主規制を策定することが重要になるのです。

そんなこんなで「有害図書」という線引きが生まれ、それは後にマンガだけでなく、ゲームも含まれるようになります。その先陣を切ったのは一部に有名な「電脳学園」でして・・・。(この作品を制作したのは、今では「エヴァンゲリオン」で有名なあのガイナックスなんです!!

「電脳学園」が宮崎県で問題になったのが1992年の9月18日、同年11月20日に「コンピュータソフトウェア倫理機構ソフ倫)」が発足し、活動を開始しました。

この辺りが(さらっととはいえ)書かれていたのは個人的に嬉しかったです。

「無垢なる子ども」イメージ

さて、この本において一番大きなテーマになっているのがここかと思います。

エロ・グロどちらの表現規制においても、「分別のつかない」子どもには見せるべきでない、という言説が大きな力を持っています。 その背景には大人たちの「子どもは無垢であり、過激な暴力描写や性描写を見ることで無垢さが失われ、健全な成長に支障をきたす」という暗黙の前提が含まれていることをこの本は指摘しています。当然ながらこの手の議論に子どもは参加しないので、「当事者不在の中、当事者を想像して保護しようとする」動きになってしまう。性描写に関わる議論においてこの事実は外せない、重要な点だと思います。

も、もちろん私の研究に直接関係があるわけではありませんが、個人的にこの手の問題を考えるときにですね!大切だと思うわけです!!

 

アプローチ・まとめ

この本のアプローチ、つまり調査手法は「資料分析」で間違いないでしょう。

主には問題となった書籍や雑誌、その問題を取り扱った新聞や雑誌記事、民間団体や政治家の発言などを様々なところから資料を収集し、それらを整理してまとめてあります。

個人的には読んでいてわかりやすく、また資料の分析も大きく違和感を感じることもなく、いろいろと考えさせられる良書だと思いました。

特によかった点として、「無垢なる子ども」概念を提起したことを挙げたいところです。これは表現規制というややこしい問題の本質を明らかにした非常に重要な取り組みと言えるのではないでしょうか。この点を念頭に置いた人物が議論すれば、論点や論調も大きく変わってくるはずです。

興味のある方にはぜひ一読をお勧めいたします。

図書館にも・・・ある、かも?

私自身ガッツリ何度も読んでいるわけではないので、拙いところも多かったと思いますが、私の研究のためにも、こうやって読んだ文献の内容について整理することは意味のあることかなあと思ってやってみました。

 

運が良ければ続くと思いますので、その際はまたよしなにしてやっていただければと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました!