【エロゲの表現規制】について卒論を書こうと試みる

※表現規制の是非を論じるものではありません。

表現規制問題における主要な事件と自主規制団体をまとめた年表を作ってみた

お久しぶりです!

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

本当にお久しぶりになってしまいました。

これは決してエロゲで卒論書く気がなくなったとかではなく、卒論の執筆始めリアルで色々と忙しかったからなのです・・・すみません。

 

今日がまさに卒論の提出日なのですが、私はなんとか提出受付時間までに必要な準備を済ませ、それまでの空き時間を利用してこの記事を書いています。

作成した卒論は、全文をここに公開することができないのですが、まあこれくらいなら良いだろう、ということで、今回は卒論内で使用した自作の年表を公開したいと思います。

 

早速ですがこちらをご覧ください!

f:id:eroge_study:20200131094807p:plain

表現物に関する業界における、一部自主規制団体と事件に関する年表

(画質悪かったらごめんなさい・・・!)

執筆を始めて、私の卒論の具体的なテーマは自主規制団体(つまりソフ倫のこと)に重点を置いたものに変わっていきました。

当然、前から言っていた表現者への着目は全く変わっていないのですが、それに加えてソフ倫表現規制やアダルトゲーム業界においてどのような役割を果たしているか、ということを明らかにする内容も含むようになったのです。

それを行う上で、他業界の自主規制団体との比較は必要不可欠でした。そこで生まれたのがこの図というわけです。

 

実は、もともと普通に「映画業界」とか「アダルトビデオ業界」とかに分けてそれぞれの業界の表現規制について書いていたのですが、先生に「これ年表欲しいですね」と言われ・・・。めんどくささに辟易しながらイラレで作成した記憶があります。

 

そんなことはどうでもいいですね。

大体は書いてある通りなのですが、補足として大切なのは、「出版」の所にある出版倫理協議会についてです。これは例外で、出版倫理協議会は審査を伴う自主規制団体ではありません。というか、出版業界にこれに該当するものがそもそもないのです。

正確には雑誌協会なる団体が(1964年から)一時期基準を設けて行なっていたようですが、現在もやっているかは怪しいところです。出版は会社レベルでの自主規制に委ねるスタイルで一般化しているようです。なので年表にも代表的なものとして出倫協のみを挙げました。

 

他業界とまとめてしまったせいで、肝心のエロゲ周りの審査団体の情報が少ない気もしますが・・・。

その辺りは以前のゼミ発表のために作成した図を載せてフォローしましょうか。

 

f:id:eroge_study:20200131100555p:plain

映像ソフト系自主規制団体の変遷

(制作時期の関係でこっちの方が情報が多少不正確かもしれません)

 

まあエロゲをテーマにした卒論、という意味では真に大切なのはソフ倫メディ倫の二つだけなので、そこだけ押さえていればセーフ・・・ですかね。

 

ともかく、それまでネット上の情報で満足していたことが、必死になって文献を探したりしてより正確な情報を求め、結果的により深い理解を得られたことが楽しかったです。

また落ち着いたら感想記事書くかもしれないので、その際はよろしくお願いします。

 

今心配しているのは卒論発表会と、アイデンティティを失いつつあるこのアカウントの今後の運用方針ですw

では、提出に行って参ります!

ありがとうございました!!

エロゲ研究の進捗報告

こんばんは。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

また更新に時間を空けてしまいました・・・。

リアルの方が忙しかった、なども理由としてあるのですが、それ以上にここに書けるような話がなくなってきた、ということが一番大きいかもしれません。

研究そのものはゆっくりと進んでいます。

今回はその進捗報告ということで、一ヶ月ほどの沈黙に値する内容になればと思います。

 

・卒論の執筆開始

Twitterでもお知らせしましたが卒論の構成をある程度固め、書けるところから書き始めました。

もちろん自身の研究の核となるインタビュー調査部分ではなく、文献のみで書ける前半部分です。現状、私の卒論の構成は一部で表現規制の議論についてまとめ、二部でアダルトゲームについて執筆する予定です。そしてエロゲー文化研究概論 増補改訂版』を参考に、二部を書き始めて今に至ります。

まあ・・・一番書いてて楽しいだろうところから書き始めちゃった感じですね。これが吉と出るか凶と出るかは来月わかると思います・・・(一次提出の締め切りが今年中なんです)。

 

字数としては12000字程、ちなみに164kbでした(Wordファイルなので誤差があるかもですが)。これらはまだ先生にもまともに見せていないため、字数が増えたり減ったりするかと思いますが、時間を見つけては少しずつ書いています。

その意味で現在執筆中の項は以下の通りです。

「アダルトゲームの定義」「アダルトゲームの発祥と社会問題化」

「アダルトゲームの経済」「ソフ倫の役割」

・・・このくらいでしょうか。

当然ながらこれらのタイトルの中に小タイトルがいくつもあって、そこで以前この記事で話題にしたことも書いています。

特に「アダルトゲームの発祥と社会問題化」は書いていてワクワクしますね。

1981年の『野球拳』というほんとのエロゲ発祥からの少しずつ盛り上がっていく過程、そして『117』問題、沙織事件、それを受けてのソフ倫設立と自分なりに丁寧に歴史を追っているつもりです。『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』には大変お世話になっております・・・!

ちなみに論文の方では『117』問題と沙織事件の間で東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件について触れ、社会問題化に至る影響を示唆しています。

 

そのうち問題がなさそうであれば、この辺りの内容は公開してもいいのかなあ、なんて思ったりしています。

 

今執筆に苦心しているのは、「アダルトゲームの経済」です。

エロゲの売上に関するグラフは、ご想像通りかなり特徴的というか、2002年をピークにした山のような形を描くわけですが、そのグラフを考察するのはかなり難しいところがあります。噛み砕いて言うと「なぜ2002年以前エロゲは売れたのか?」という問いと「なぜ2002年以降エロゲは売れなくなったのか?」という問いの2つに解を与えなければならないのですが、その論拠を持ち出すことが難しいのです。特に前者の問いは当時のエロゲのタイトルごとの売上が分からないため、どうしても推測を含んでしまいます。これで論文として成り立つのか・・・?というところが不安です。

加えて、「アダルトゲームの経済」を考える上で、どうしても「家庭用ゲームの経済」との比較が必要であることに気づき、「家庭用ゲームの売上推移なんて、僕のデータにないぞ!?」状態になってます。シューベルト君持ってたりしませんかね。

 

そんなこんなで課題も山積しておりますが、そろそろ年末の一次提出に向けてスピードアップしていきたいところです。

 

・エロゲユーザーへのインタビュー調査をやめた

前回の記事で触れたばかりですが、これをやめることにしました。

記事の投稿後、聞き取り調査に行ってきたのですが、そこでの情報量に圧倒され、「この上にユーザーの聞き取り調査の内容を載せるのは論文の主張がぼやけてしまわないか」という不安がありました。そのことをゼミで相談したところ、先生からも同様の理由でクリエイターとソフ倫についての内容に絞るべきということになり、見送ることとなりました。

先生曰く、「取材がしにくいところを優先すべき」とのことです。確かに・・・。

記事を投稿してから、私の方に連絡は特にありませんでしたが、もしご検討くださった方がいらっしゃったら、本当に申し訳ございませんでした。

 

・新たなインタビューの準備

実は今週、新しく聞き取り調査を行います。

業界関係者にお話を伺う、という意味ではこれで4件目になります。

当初は、まさかこんなに聞き取りをさせていただけると思っていなかったので、こうして書いていて驚いているくらいです。

インタビューや、それに至るまでのやり取りの中で感じたのは、エロゲに関わる方々が本当にみなさん快く対応くださるということです。

こちらのお願いは決してお手間をとらせないようなものではなく、たくさんのお時間をいただくものばかり。なのに失礼にも研究へのご協力という形でお願いしています。

「それにもかかわらずこのような丁寧な対応を・・・!」と感動しっぱなしの日々です。

研究にご協力いただいた方には何回でもお礼申し上げたいですし、ご協力いただいたからにはそれに応えなければと、身の引き締まる思いです。

というか、書いていて引き締まってきました。頑張ります。

 

・・・と、書いていてだいぶ長くなってしまいましたが、ここらで進捗報告を終わりにしようと思います。次回の内容は全く未定ですが、問題がなさそうならもう少し自身の卒論の内容に踏み込んでもいいかなと考えています。

聞き取り調査の内容に触れなければ問題ないと思うのですが、念の為・・・。

Twitterにももう少し頻繁に出没するようにしますので、改めて今後ともよろしくお願いします!

お読みいただきありがとうございました!!

 

 

【取材中止しました】昔からのエロゲユーザーにインタビュー、したーーーーーーい!!

こんにちは。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

今回は、前の記事で触れた「エロゲユーザーへのインタビュー希望」について、詳細とそこに至った理由を書いていきます。

 

11/5追記

ユーザーへのインタビュー調査は行わない運びとなりました。

よって以下の募集を中止いたします。

大変失礼いたしました。

経緯は以下の記事にございます。

eroge-thesis.hatenablog.com

 

何度目かになりますが、私の研究テーマは「アダルトゲームの表現規制」について。特に「表現者(アダルトゲーム開発者)」の言葉を中心に取り入れて作成しているわけですが、この表現者ソフ倫のような審査団体の倫理規程の改定の影響をダイレクトに受ける「当事者」となります。ここの声を拾っていくのが本研究の特色でもありました。そして「ユーザー」というのは、表現者の制作したゲームを通して間接的に表現規制の影響を受ける「当事者」と言えます。ここの声も拾っていきたい、というのが私の今考えていることです。

より具体的に言うと、業界的にインパクトの大きかった出来事、例えば沙織事件からのソフ倫の設立や、義妹騒動(近親相姦表現の禁止)、レイプレイ事件などが起こった時にユーザーは何を思ったのか、ということを聞いてみたいと思っています。

特にレイプレイ事件の際は不当な表現の自由の侵害であるとして多くのユーザーが反対運動をされていた、ということもあり、ユーザーが全く業界について無関心ではないだろうというわけです。(もちろん関心がなければいけないというわけではなく、一ユーザーが知っていること、感じたことをそのまま聞きたいと思っています)

 

というわけで今私がインタビューしたい!と思っているユーザーさんのイメージはこんな感じです。

ある程度昔からエロゲをプレイされている方

(理想はソフ倫設立時を知る人、ですが難しいと思われますので、最低でもレイプレイ事件をご存知の方だと嬉しいです)

業界への理解、興味がある方

(例えば「〇〇さんのシナリオが好き」「××さんの原画が良い!」「あのメーカーの作品面白いらしいよ」などといった感覚のあるユーザーの方であればほぼ条件を満たしています。2chなどでエロゲに関わる情報交換を活発に行われている方だとさらにありがたいです) 

エロゲの表現規制について知識のある方

(例えばソフ倫のことを知っていたり、いわゆる「NGワード」を知っていたり、倫理審査の結果表現の変更を余儀なくされた作品があることを知っている、など上に挙げた「業界への理解」と限りなく近いところがあります)

 

ざっくり言うと「昔ながらのエロゲファン」という感じです。

もしそういった方がいらっしゃって、私の研究にご協力いただけるということであれば、ぜひ私のTwitterDMからご連絡いただきたいと思います。

詳細なお話はその時にするつもりですが、インタビュー形式はDMなどでのチャットで行い、謝礼などは申し訳ありませんが無しでお願いする予定です。

細かい質問だけのお問い合わせもお待ちしておりますので、お気軽にDMいただけると喜びます。

 

 何より、私は自身より昔からエロゲを愛している人と話してみたい、話を聞いてみたいと思っていて、そういった個人的感情によるところが大きいということを強調したいです。研究は研究でやらなきゃいけないことではありますが、それ以前に、私は私の好きなこと、やりたいことで研究を行わせてもらっていて、ありがたいことに多くの方のご協力をいただいていて、また新たな人の出会いを求めることができるということがとても楽しいのです。そういった思いの中複雑な感情になることもありますが、本当につら愛と思ったことは一度もなく、ただまだ見ぬ人との出会いを楽しみに思っています。

そんな私の研究への姿勢をご理解いただき、お気軽にDMいただきたいなと!

思っております!

 

少しとっちらかってしまいましたが、私の気持ちが少しでも伝わっていればと思います!お読みいただきありがとうございました!

研究の進捗報告と改めての御礼

こんにちは。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

夏から秋にかけて、季節の変わり目とも言える現在ですが、あれやこれやと忙しく、ブログの更新が滞っておりました。

"あれやこれや"と言いますと、研究には全く関係ないプライベートなことですとか、私は四年生の文系大学生ですので、就職先の内定式などがあったりもしたのですが、ありがたいことに研究の方の予定もいくつかありました。

本日はその研究の進捗について、少しだけご報告したく記事を更新しております。

 

といっても、実は研究をきっかけに関係を持たせていただいた方にはそのことを公にして良いという許可をいただいていないので、「これくらいなら大丈夫だろう・・・」という個人的見解の元、ぼんやりと書かせていただきますね。

 

まず、私の研究において、調査方法は聞き取り(インタビュー)であり、以前クリエイターの方にインタビューしたい旨の記事を更新しました。

eroge-thesis.hatenablog.com

その結果、TwitterのDMを通して複数人の業界関係者と繋がることができ、調査も順調に進めることができています!

本当に嬉しく、ありがたいことです!ご協力いただき、心より感謝しております!!

 

これはTwitterというメディアが、上手に使えば様々なトピックの専門家と繋がることができる可能性を示しており、本研究以外にも十分応用可能な手法であると思われます。

先日のゼミではそのような内容で報告を行い、先生からも高い評価を得られました。

社会学研究における聞き取り調査の現代的アプローチの一つとして、ここに書き残しておきたく思います。

 

今後につきましては、また一つ、大きな聞き取り調査を控えており、戦々恐々とするのと同時に、近づいてくる締め切りに焦りを感じています。

これから、もう少し多くの人に調査の依頼をかけていきたいと思っているところです。

特に、「昔からエロゲをプレイしていた」エロゲユーザーの方にもお話を聞いてみたいと思っています。具体的なことは近く記事にまとめますので、もしご興味があれば除いていただけますと幸いです。

 

この記事を通して何が言いたかったかというと、最近Twitterでは黙していることが多かったですが、おかげさまで研究は前に進んでいます、ということをお伝えしたかったのです。しかも想像以上に最高の形で!

改めて、私と関係を持ってくださった全ての方に心より御礼申し上げます。そして、私の卒論が完成するまで、もうしばらくお付き合いいただけますと嬉しいです。

お読みいただき、本当にありがとうございました。

「有害コミック」規制運動の展開 という論文を読んでみて

お久しぶりです。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

また随分間が空いてしまいましたが、研究自体はじわじわと進めています。

全ての進捗を報告できるわけでもないので、もどかしいところです。

 

今回は「エロゲ」からは少し外れて、関連したテーマの論文について書いてみようと思います。

それがこちら。

 

有害コミック」規制運動の展開

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjscrim/19/0/19_KJ00001702622/_pdf/-char/ja

 

こちらのwikipediaも参考にしていただければと思いますが、

有害コミック騒動 - Wikipedia

この論文が発表されたのは1994年ということで、「有害コミック運動」が盛んだった1980年代後半〜1992年頃を受けて書かれたものと思われます。

この論文の調査は、「有害コミック」を規制せよ、と声を発する団体に対して直接聞き取りを行うものです。その目的は「どのようにしてある種のマンガが社会問題になっていったのか、を明らかにすること」とのことですが、読んでいくにつれかなりビックリな事実が明らかになりました。

 

細かい中身は読んでいただければと思うのですが、雑な結論から言うと「彼らから出される様々な請願書や陳情書には一定のパターンがあり、その書類にある代表者は有害コミック規制について積極的とは限らない。その裏には警察および警察に近しい団体の影響が窺える」と言うもので、これは非常に面白いと感じました。

そもそも表現規制周りでの警察、というのは「わいせつ」概念が曖昧であることもあってかなり疑問視される動きをしていることも多いです。「わいせつ」概念においてどうしても人によって感覚の違いが生まれてしまうからこそ、私も警察の基準が以前と変わったりとかについては仕方ない部分もあるように思っていたのですが・・・。

それが警察が裏で扇動して「有害コミック」規制運動を動かし、条例などの成立を目指している、となればこれは相当なことではないでしょうか。

もちろんこれは可能性の域を出ません。その可能性がどれだけのものか、という点については論文を読んでの各自の感覚に任せたいと思いますし、私自身その可能性を指摘する以上のことを言うつもりはありません。

しかし、「可能性がある」ということを知る、ことは非常に大切なように思います。

考察の可能性が広がるからです。ただし情報を読み誤って根拠のない断定など、行わないようにしたいところですね。

 

ともかく、私自身表現規制に関する文献にあたる中で、「警察」という国家権力との関係は避けられないものだということに確信に近いものを感じていた中に、このような可能性の指摘があったことは大変刺激的でした。

私はいたずらに警察をバッシングする趣味はないんですが、少しでも真実に近づきたいと思う中で、非常に興味深い情報が得られたので共有したいと思った次第です。

これからも恐れずに文献、論文に当たっていきたいですね。読書は苦手ですが、頑張ろうと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

 

エロゲ審査団体「ソフ倫」と「メディ倫(CSA・映像倫)」の現在

どうも。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

今回は前回の記事で触れたことの続きとして、ソフ倫メディ倫の現在」について書きます。

 

前回の話をざっくり振り返ると、「アダルトゲームの審査団体として唯一の存在だったソフ倫の規制が厳しいことをきっかけに、主にアダルトビデオの審査を行っていたメディ倫がアダルトゲームの審査を開始した。」みたいな話で終わっていたかと思います。

このままだと、業界において二つの審査団体が存在することになり、ある意味同業他社として競い合う関係になっていくわけですが・・・。実際のところはどうなのでしょうか。

 

結論から言うと、団体同士の距離は「ある事件」をきっかけに接近、現在では互いの審査を尊重する旨の覚書を交わしているそうです。

 

そのある事件、というのが・・・。

2007年に日本ビデオ倫理協会ビデ倫)が摘発された事件です。

突然新しい名前を出してしまいましたが、ビデ倫は1980年代から存在する、比較的歴史あるアダルトビデオの審査団体でした。

1990年代にAVメーカーが増加してくる中、ビデ倫の審査基準に不満を持ったインディーズメーカーは独自の基準(安直に言うとビデ倫よりモザイクが薄い、ということです)でAVを市場に流通させ、その人気が高まっていきました。

すると当然ビデ倫の審査を継続的に受けているメーカーはビデ倫に対して審査基準の緩和を訴えますが、ビデ倫はメーカーの要望を突っぱね、結果的に「時代の波に取り残される」構図になってしまいました。

そこからの経緯はそこまで詳しく話を聞いていないのでなんとも言えませんが、焦りと他審査団体(メディ倫ビデ倫に対抗して生まれた審査団体と言えます)との競争意識から審査基準の大幅な緩和が行われたのでしょう。2007年8月23日、ビデ倫審査のAVがモザイク処理が薄すぎるとして摘発、ビデ倫から逮捕者を出す事態となってしまいました。

本来審査団体とは、時に国や地方自治体のお墨付きを得て、それを背景にメーカーにとって(逮捕されないという)安心感のある審査をするものです。それがこのような事態になるのはまさに「なんのための審査団体なのか」という話になりうるでしょう。そしてこのような事件が社会で話題になることによって、この手の産業の存続そのものに影響を与えかねないことも指摘しておかねばなりません。

 

この事件を受けて、結果的にソフ倫メディ倫(2007年時点ではCSA)は接近する形となり、現在に至ります。少なくともソフ倫の意向としては「エロゲ業界を守っていきたい」という思いがあったのだと感じます。

現在、とは言いましたが今ってメディ倫(現在は日本コンテンツ審査センター)審査のエロゲって出てるんですかね?調査不足、というか日本コンテンツセンターのHPにほぼ情報がないことに加え、電話でお伺いしてもほとんどお話いただけなかったので大変厳しい状態なのですが・・・。詳しい方がいらっしゃったらお話を伺いたいところです。

あるとすれば以前メディ倫で販売していたメーカーの作品が今も日本コンテンツ審査センターから出ている、ということはあるでしょう。しかし審査基準について競争状態を避けるような話し合いをしていることを考えると、業界内でも積極的な活動を行うソフ倫にメーカーが流れていくのは自然なことと考えられます。今現在新しく生まれるメーカーのほとんどはソフ倫に加盟しているのではないでしょうか。

 

どうしてもいくつか疑問は残ってしまいますが、ひとまず現在もエロゲの審査団体は二つ、存在しているけれども熾烈な競争状態と言える状況ではない。その理由は過去AV業界で起こった「あってはならない」事件によるものだ、ということです。

 

今回はそれなりに綺麗にまとまった気がするので満足しています。

次回はどんな内容を書こうか、と悩むところもありますが頑張っていこうと思います。

ご覧いただきありがとうございました。

 

 

エロゲの「義妹」概念を振り返ることで見える「第二の審査団体」の存在

お久しぶりです。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、今回も私自身の知識の整理も兼ねて、エロゲ表現規制の話をしたいと思います。

 

今回取り扱うのは「義妹」についてです。

考えてみると「義妹」ってなかなか特殊な概念だと思いませんか?義理の妹、その存在がこれだけクローズアップされるのは「近親相姦がタブーである」ということの裏返しに他なりません。

 

実際、「義妹」という言葉が浸透した背景にはソフ倫による規制が絡んでいまして、エロゲでの近親相姦の描写が禁止されていた時期がありました。

しかし、「ヨスガノソラ」のように近年では実妹もののエロゲも見られますね。

(余談ですが私は最近「9-nine-そらいろそらうたそらのおと」で実妹エロゲをやりました。近親相姦のタブー、という点でもそうですが、全体的にシナリオがシリアスでしんどかったですね・・・)

それはつまり、「一度近親相姦が禁止されたが、規制が緩和された」ということが言えます。表現は規制されることは多くても、緩和される例というのはあまり聞きません。

 

「なぜ、近親相姦は規制されたのか?」

そして

「なぜ、近親相姦規制は緩和されたのか?」

という問いは非常に興味深いものではないかと思います。

 

この辺りは先日ソフ倫様にお伺いさせていただいた時にも重点的に聞かせていただいたテーマでしたので、(どこまで言っていいのかわかんないですが)少しずつ分かったことをこちらでご報告できればと思っています。

 

ひとまず、ソフ倫の規制項目の変遷の一部について簡単にまとめます。

1992年に初めて制定された後、1994年にR指定(15歳未満購入禁止、現在は存在しない)を制定、ここまでは大丈夫です。

次が重要で、1999年の内容変更で決められた規制項目が「18禁ソフトにおける18歳未満者の性的な描写禁止、近親相姦描写(義理を除く)の禁止、獣姦表現の禁止」ということでかなり厳しい規制だったようです。実際この規制に対し、いくつかのメーカーには不満が溜まっていたとのことでした。

 

察するに、この規制はおそらく以前触れた有害コミック問題、そして沙織事件による世間からの厳しい目を逃れるための策だったのでしょう。今では当然のものになっている「18歳未満キャラクターの出演禁止」に留まらず、世間一般において心象が悪いと思われる「近親相姦」と「獣姦表現」を一気に禁止としたのはかなり当時の社会状況に配慮した結果ではないでしょうか。ただし、この点はまだあまり詳しい人や組織から話を聞けていないので、今後の課題としたいところです。

 

ここで「近親相姦描写の禁止」が「義理を除く」とされたのはソフ倫によるメーカーへの配慮でしょう。ただし実際にこの配慮がエロゲ界隈にとって十分なものだったのかどうかは当時を知るクリエイターやエロゲユーザーの方に聞いてみないとわからないところではあります。

 

そして、そこに現れるのが「新たな規制団体」の存在でした。

抜きゲーファンの方ならご存知かもしれませんが、「メディア倫理協会(以下メディ倫)」というものです。後に「コンテンツ・ソフト協同組合(CSA)」や「映像倫理機構(映像倫)」と名前を変えるややこしい組織なのですが、その経緯まで触れていると記事が長くなりすぎてしまうので適度に端折っていきます。

 

メディ倫というのはかの「ソフト・オン・デマンド」などの当時のインディーズAVメーカーが複数集まって生まれた映像ソフトの審査団体です。当時はAVの審査と言えば「日本ビデオ倫理協会ビデ倫)」という団体に任せるのが一般的だったのですが、その厳しめな審査に不服なメーカーが「だったら自分たちで審査しちゃおうぜ!」となってできた団体です。

つまり、元々はAV審査専門の団体だったわけですね。

 

しかし、1999年のソフ倫倫理規定の改正で状況が動きます。

その規制の厳しさに不満を持ったメーカー、そして流通の動きによって、2003年にメディ倫ソフ倫を脱退したメーカーを受け入れる形でアダルトゲームの審査を開始するのです。これはアダルトゲームの審査において、これまでのソフ倫一強状態が崩れた瞬間でもありました。

この経緯から察せられる通り、当時のメディ倫の売りはソフ倫より規制が緩いこと」でした。メディ倫ではソフ倫で禁止された三項目が全て(程度はあるかもしれませんが)表現できるということで、これにはソフ倫も対応を余儀なくされました。

 

結果、2004年の倫理規定改正で、ソフ倫は「近親相姦の禁止」と「獣姦表現禁止」の二点を注意事項への追加(「過度な表現をしない」という条件付きで表現可能)がなされ、事実上の規制緩和となりました。

現在もこの二点は注意事項として倫理規定に残っていますので、興味のある方はソフ倫の公式HPから探してみてください。

 

この後ソフ倫メディ倫はどうなっていくのか・・・という話はまた別の記事で触れることとしましょう。

ともかく、今回の記事では「義妹」概念について説明するはずでした。

多くのメーカーが属するソフ倫を中心に考えると、「近親相姦描写(義理を除く)の禁止」が制定されたのは1999年、そして規制緩和が2004年ということで、その間は約5年とそこそこの長さ、と評すべきでしょうか。エロゲ界隈にインパクトを残すには十分な期間と言えるかもしれません。個人的には当時のエロゲユーザーにとってはかなり衝撃的な出来事だったのでは、と思うのですがどうでしょうか。私はその時代小学生とかなので分かりません・・・。

 

社会的インパクト、という意味では社会学研究として「エロゲユーザーへの調査」というのは大変重要なものだと思いますし、今後ぜひやってみたいところではあります。

その気持ちを記事を書きながら思い出すことができて、有意義な時間でした。

学生最後の夏休み、お盆などを経てそれなりに研究をおろそかにしていたのですが、改めて気合いを入れ直し、頑張っていこうと思いました!

 

ブログの更新頻度ももう少し上げられれば、と思いますのでよろしくお願いします。

記事へのコメントや、どんな記事が需要があるか、などのリクエストなどあればぜひお願いします。

最後までお読みいただきありがとうございました!