【エロゲの表現規制】について卒論を書こうと試みる

※表現規制の是非を論じるものではありません。

エロゲの「義妹」概念を振り返ることで見える「第二の審査団体」の存在

お久しぶりです。

エロゲで卒論書く人(@eroge_thesis)です。

 

前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、今回も私自身の知識の整理も兼ねて、エロゲ表現規制の話をしたいと思います。

 

今回取り扱うのは「義妹」についてです。

考えてみると「義妹」ってなかなか特殊な概念だと思いませんか?義理の妹、その存在がこれだけクローズアップされるのは「近親相姦がタブーである」ということの裏返しに他なりません。

 

実際、「義妹」という言葉が浸透した背景にはソフ倫による規制が絡んでいまして、エロゲでの近親相姦の描写が禁止されていた時期がありました。

しかし、「ヨスガノソラ」のように近年では実妹もののエロゲも見られますね。

(余談ですが私は最近「9-nine-そらいろそらうたそらのおと」で実妹エロゲをやりました。近親相姦のタブー、という点でもそうですが、全体的にシナリオがシリアスでしんどかったですね・・・)

それはつまり、「一度近親相姦が禁止されたが、規制が緩和された」ということが言えます。表現は規制されることは多くても、緩和される例というのはあまり聞きません。

 

「なぜ、近親相姦は規制されたのか?」

そして

「なぜ、近親相姦規制は緩和されたのか?」

という問いは非常に興味深いものではないかと思います。

 

この辺りは先日ソフ倫様にお伺いさせていただいた時にも重点的に聞かせていただいたテーマでしたので、(どこまで言っていいのかわかんないですが)少しずつ分かったことをこちらでご報告できればと思っています。

 

ひとまず、ソフ倫の規制項目の変遷の一部について簡単にまとめます。

1992年に初めて制定された後、1994年にR指定(15歳未満購入禁止、現在は存在しない)を制定、ここまでは大丈夫です。

次が重要で、1999年の内容変更で決められた規制項目が「18禁ソフトにおける18歳未満者の性的な描写禁止、近親相姦描写(義理を除く)の禁止、獣姦表現の禁止」ということでかなり厳しい規制だったようです。実際この規制に対し、いくつかのメーカーには不満が溜まっていたとのことでした。

 

察するに、この規制はおそらく以前触れた有害コミック問題、そして沙織事件による世間からの厳しい目を逃れるための策だったのでしょう。今では当然のものになっている「18歳未満キャラクターの出演禁止」に留まらず、世間一般において心象が悪いと思われる「近親相姦」と「獣姦表現」を一気に禁止としたのはかなり当時の社会状況に配慮した結果ではないでしょうか。ただし、この点はまだあまり詳しい人や組織から話を聞けていないので、今後の課題としたいところです。

 

ここで「近親相姦描写の禁止」が「義理を除く」とされたのはソフ倫によるメーカーへの配慮でしょう。ただし実際にこの配慮がエロゲ界隈にとって十分なものだったのかどうかは当時を知るクリエイターやエロゲユーザーの方に聞いてみないとわからないところではあります。

 

そして、そこに現れるのが「新たな規制団体」の存在でした。

抜きゲーファンの方ならご存知かもしれませんが、「メディア倫理協会(以下メディ倫)」というものです。後に「コンテンツ・ソフト協同組合(CSA)」や「映像倫理機構(映像倫)」と名前を変えるややこしい組織なのですが、その経緯まで触れていると記事が長くなりすぎてしまうので適度に端折っていきます。

 

メディ倫というのはかの「ソフト・オン・デマンド」などの当時のインディーズAVメーカーが複数集まって生まれた映像ソフトの審査団体です。当時はAVの審査と言えば「日本ビデオ倫理協会ビデ倫)」という団体に任せるのが一般的だったのですが、その厳しめな審査に不服なメーカーが「だったら自分たちで審査しちゃおうぜ!」となってできた団体です。

つまり、元々はAV審査専門の団体だったわけですね。

 

しかし、1999年のソフ倫倫理規定の改正で状況が動きます。

その規制の厳しさに不満を持ったメーカー、そして流通の動きによって、2003年にメディ倫ソフ倫を脱退したメーカーを受け入れる形でアダルトゲームの審査を開始するのです。これはアダルトゲームの審査において、これまでのソフ倫一強状態が崩れた瞬間でもありました。

この経緯から察せられる通り、当時のメディ倫の売りはソフ倫より規制が緩いこと」でした。メディ倫ではソフ倫で禁止された三項目が全て(程度はあるかもしれませんが)表現できるということで、これにはソフ倫も対応を余儀なくされました。

 

結果、2004年の倫理規定改正で、ソフ倫は「近親相姦の禁止」と「獣姦表現禁止」の二点を注意事項への追加(「過度な表現をしない」という条件付きで表現可能)がなされ、事実上の規制緩和となりました。

現在もこの二点は注意事項として倫理規定に残っていますので、興味のある方はソフ倫の公式HPから探してみてください。

 

この後ソフ倫メディ倫はどうなっていくのか・・・という話はまた別の記事で触れることとしましょう。

ともかく、今回の記事では「義妹」概念について説明するはずでした。

多くのメーカーが属するソフ倫を中心に考えると、「近親相姦描写(義理を除く)の禁止」が制定されたのは1999年、そして規制緩和が2004年ということで、その間は約5年とそこそこの長さ、と評すべきでしょうか。エロゲ界隈にインパクトを残すには十分な期間と言えるかもしれません。個人的には当時のエロゲユーザーにとってはかなり衝撃的な出来事だったのでは、と思うのですがどうでしょうか。私はその時代小学生とかなので分かりません・・・。

 

社会的インパクト、という意味では社会学研究として「エロゲユーザーへの調査」というのは大変重要なものだと思いますし、今後ぜひやってみたいところではあります。

その気持ちを記事を書きながら思い出すことができて、有意義な時間でした。

学生最後の夏休み、お盆などを経てそれなりに研究をおろそかにしていたのですが、改めて気合いを入れ直し、頑張っていこうと思いました!

 

ブログの更新頻度ももう少し上げられれば、と思いますのでよろしくお願いします。

記事へのコメントや、どんな記事が需要があるか、などのリクエストなどあればぜひお願いします。

最後までお読みいただきありがとうございました!